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アレルギーの診断

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アトピー性皮膚炎と食物アレルギー


 アレルギーとは、花粉などのアレルゲンに免疫が関与して症状が発現したもので、犬猫の皮膚疾患で問題になるものにはアトピー性皮膚炎と食物アレルギーがあります。犬アトピー性皮膚炎(AD)は、「花粉やダニのIgE抗体が関連した、特徴的な症状とかゆみを伴う皮膚炎」と定義されています。アトピー性皮膚炎では、アレルゲンにBリンパ球が反応して体内でIgEという抗体が増え、このIgEがヒスタミン放出細胞(肥満細胞)に作用して痒みや炎症が引き起こされます。この反応をⅠ型アレルギーと言います。
 一方、食物アレルギーでは、Ⅰ型アレルギーだけでなく、Tリンパ球が直接皮膚に炎症を起こすⅣ型アレルギーも存在します。
 アレルギーは必ずかゆみを伴い、かゆみの原因が感染症でなければアレルギーを疑います。犬アトピー性皮膚炎(AD)の場合は、耳、頸部、脇下、肘、足先、内股、肛門などがかゆくなります。食物アレルギーでは、その他に目、口、背中にかゆみがみられるのが特徴です。





アレルギー強度検査(犬のみ)

 
 難治性の皮膚炎でかゆみがある場合は、「アレルギー強度検査」をおススメします。アレルギー性の炎症が起きると、CCケモカイン受容体-4(CCR4)陽性リンパ球が増加するため、その割合を調べるとアレルギーが原因で皮膚病が起きているかがわかります。また、アレルギーがどの程度強いかも知ることができます。



アレルゲン特異的IgE

  
 アレルギーが原因で皮膚病が起きていることがわかれば、次に「何にたいしてアレルギーが起きるのか?」を知らべる必要があります。当院ではモノクローナル抗体(抗IgE抗体)を使用した検査を採用しています。日本の室内で飼育されている犬は、コナヒョウヒダニなど(ハウスダスト)に反応することが多いようです。原因がわかれば、空気清浄器やIGR散布剤(ダニの脱皮阻害剤)などを使用したり、副作用の心配の少ない抗ヒスタミン薬を処方できたりと、いろいろ対策をとることができます。




食物アレルギー検査(犬のみ)

  
 従来のアレルギー検査では、ポリクローローナル抗体(抗IgE抗体)を使用していたので、アトピー性皮膚炎も特異度が良くなかったのですが、食物アレルギーはIgEの関係しないⅣ型タイプもあるので特異度は非常に悪く、いろんな種類の食べ物がアレルギー原因物質としてひっかかってしまい、検査が治療に結びつかないでいました。しかし、リンパ球反応検査は従来の検査と異なり、特異度が非常に高いので食物アレルギーの把握が的確に行えるようになりました。アレルギー検査では、飼い主さんに少なくない費用負担をお願いすることになるので、犬の皮膚症状が確実によくなるための精度の高いものをおススメしています。


症例1:食物アレルギーの猫


マロン食べ物アレルギー.JPG 完全室内飼育でノミなどの感染症がない猫が、背中をかゆがってなめることで脱毛していました。そこで、低アレルギー食を処方しました。
 食物アレルギーを疑う4つのサインは
・目、口、背中のかゆみ
・1才未満からのかゆみ
・1年中症状に変化がない
・1日3回以上の糞便回数
 上記の1つでも当てはまれば食物アレルギーが疑えます。アレルギーと診断された皮膚病の統計では、食物アレルギーは9%とかなり少ないのですが、近年、アトピー性皮膚炎と食物アレルギーの混合型のケースは多いと報告されています。かゆみのある犬114頭に低アレルギー食を食べさせた結果、78%で改善がみられたという報告もあります(日本畜産新報NO6.2008より)。
食物アレルギー改善2.JPG 左の写真は3か月間、処方食を食べた後の状態です。背中の脱毛は改善し、毛が生えそろうようになりました。